君の名は 父を説得できた理由とは?

この疑問に対する答えは小説「君の名は アナザーサイド」を読むとわかります。
ネタバレになりますのでご注意をお願いします。

糸守町が彗星の落下により壊滅するという事実を知った瀧は、
三葉に入れ替わった時に町民をできる限り高校に避難させるわけですね。

映画の中では三葉が町長であり父である宮水俊樹のもとを訪れた際、
取り合ってもらえずに結局三葉(中身は瀧)が俊樹のネクタイをひねり上げる
シーンで切れてしまっています。

小説の中ではこのシーンのみならず、
クライマックスに至るまでの見事なまでの「つながり」が詳細に書かれており、
町民の避難がなぜ最終的に成功したのかを納得することができます。
結論から言えば俊樹は町民を避難させる決断をしたわけです。

父・俊樹はなぜ三葉の懇願に応じて町民を避難させたのか?

映画の中では三葉に対してあれだけ冷たく対応し、
「お前は頭がおかしいから病院に行った方がいい」くらいまで言ってたくせに
映画が終わってみれば「あれ、お父さんってあの時結局町民を避難させたのか?」
という疑問が残るはずです。
事実をみれば全くもってその通りですが、なぜ俊樹はその決断に至ったのか?

その答えを導くにはまず

・なぜ俊樹は町長になったのか?
・二葉の死について

これらを理解する必要があります。
小説「君の名は アナザーサイド」を読むと分かるのですが、
かいつまんで説明しますね。

なぜ俊樹は町長になったのか?

俊樹は若い頃に学者の卵のような感じで神社などの古い歴史や慣習を研究するために
糸守町の宮水神社を訪れ、三葉の母である二葉と出会います。
やがて二人は親しくなり結婚。
俊樹は婿養子として宮水家に入り、仕事を辞めて宮水神社の神主になります。
三葉、四葉と生まれ平和な日々でしたが、
古くは糸守の豪族でもあった宮水家、ひいてはそこの美人娘である二葉を
神格化するような町の雰囲気に俊樹は違和感を覚え始めます。

それを決定付けたのが「二葉の死」でした。
当時の医学であってもまだ手の施しのようのあった病状であったにも関わらず、
二葉はいわゆる西洋医学で病気を治すことを拒むどころか、
何かの運命に従うかのように死を選びました。
二葉の死を知った町民や、二葉の肉親である一葉でさえも
「二葉の死は抗うことのできなかった運命だった」ような言い方をする始末に
俊樹は激怒。

宮水家を飛び出して、宮水家の「呪い」に毒された(と感じた)糸守の町を
自分の手で変えてやると意気込んで町政に乗り出したのです。
そう、俊樹は愛する妻の死でさえも神格化してしまう糸守町民の目を覚ますべく
立ち上がったというわけなのです。(これはあくまで俊樹目線の価値観)

二葉は自ら進んで死を選んだ、その理由は

生前の二葉は俊樹にこんなことを言いました。

「この世のすべてはあるべきところに収まるんやよ。」

そしてこのセリフは病床に伏した二葉が死の間際にも口にしており、
二葉の死に際に立ち会えなかった俊樹への遺言は

「これがお別れではないから」

俊樹は糸守の町民はおろか、一葉や二葉までが「その死」を「運命」として
受け入れてしまっているという状況に我慢ならなかったのです。
愛する妻の死が町に巣食う妙な伝統によって当然視されているという事実に。

一葉と大喧嘩をして追い出されるように宮水家を飛び出した俊樹は
町政に乗り出した2年後に町長に当選。
糸守町の構造改革に乗り出しました。
町の建物のほとんどを手がける勅使河原建設に諸々の根回しをし、
「宮水」という名のブランドをフルに使って糸守での支持を強固なものにしていきました。

俊樹は「宮水家の女」が代々持っている盲信的な妄想やセリフを毛嫌いしていました。
三葉にもそうした兆候が見られたこともあり、父娘の関係は疎遠に。

そんな中、ある時突然に別人のような三葉(中身は瀧)が町長室に乗り込んできて、
彗星が今夜衝突するから町民を高校に避難させろと胸ぐらを掴んできたわけです。
別人のように鬼気迫る三葉の様子に大きなショックを受けた俊樹の脳裏にその時、
これまで起きてきたことのつながりや二葉の遺した言葉がフラッシュバックします。

「この世のすべてはあるべきところに収まるんやよ。」
「これがお別れではないから」

…三葉は偽の避難指示などを出して何をするつもりだったのか?

…人を集めて、避難させる…

そしてその時、喧嘩別れしたはずの一葉と四葉が面会のために町長室を突然来訪。
今朝から三葉の様子や行動が明らかにおかしいことを一葉から告げられた俊樹は
ただならぬ異常事態を感じ始め、
急に思い出したように窓のカーテンを開けると
夜空の彗星は二つに割れ、三つに割れ、四つに割れ、
複数に割れたその欠片が散り散りに飛び散り始めています。

俊樹の記憶の欠片が全て繋がり始める

「この世のすべてはあるべきところに収まるんやよ。」

俊樹が宮水神社に反発して町長に就任した事さえも
『あるべきところ』であったのかと気付く。

なぜなら俊樹は今、糸守町の全住民に避難指示を出せる立場にあるからです。

俊樹は彗星衝突から糸守町を守るためにこの町を訪れ二葉と出会い、
俊樹を町政へと誘うために二葉は命を落とした
俊樹の中の宮水家と糸守への憎悪それこそが糸守を守るために繋がれたもの

そして俊樹は自分のもとを訪れた三葉に二葉の面影を見たのです。

「これがお別れではないから」

以上が、俊樹が全町民を避難させるに至るまでの流れです。

「お前は誰だ」町長(三葉の父親)の発言の謎

瀧が三葉と入れ替わって俊樹に対して必死に避難指示を出すように要求した際、
俊樹は三葉(瀧)に対して「お前は誰だ」という言葉を発しました。

これは推測の域を出ませんが、
おそらく俊樹は三葉の中身が三葉ではない誰か(瀧)に入れ替わっていることを
感じ取っていたのかもしれません。

ここから考えられるのは、
俊樹にも「入れ替わり」の経験があるのではないか?ということです。

この推測を裏付ける俊樹のセリフがあります。

瀧が宮水神社のご神体で三葉の口噛み酒を飲んだ後に転倒して倒れ、
瀧が三葉の人生の回想シーンに入るところがあります。

そこでは二葉が他界した際に俊樹が

「救えなかった…」

と口にします。

これは恐らく俊樹自身も過去に入れ替わりの経験があり、
二葉が病気になる未来を知っていた。。
しかし結局最後は死なせてしまったという無念の気持ちがあの「救えなかった」
という言葉に集約されていたのではないかと考えられるのです。

だからこそ、町長室での三葉の入れ替わりを見抜き、
事の全てを理解し、町民を避難させた。

小説「君の名は アナザーサイド」はここでお話が終わっています。
この先は映画や小説に散りばめられたヒントを元に想像を膨らませるか、
新海監督の何かしらの続編を待つしかなさそうです^^;

何れにしても小説版アナザーサイドを読むと作品の理解がかなり深まります。
むしろアナザーサイドの要素をもっと映画に盛り込むべきだったんじゃないかと思ってしまうくらいです。
ぜひ読むことを強くオススメします。

いかがでしたでしょうか。
理解すればするほど深いストーリー。

書いてて改めてそう思いました(笑)

今回はここまでです。
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